仕事の都合でマレーシアに渡ったKOJIこと山本孝二(眞正会初段)。どうせなら海外の格闘技・武道事情や文化の違いをレポートしてもらおうとこのコーナーをスタートしました。40歳を前にした単身赴任、満身創痍の空手家KOJI。さてどんな通信が届きますやら。


OPENING
今回からお送りするのはマレーシア版格闘技通信です。
日本で空手を学んで海外に出てみると、面白いことに出くわします。
同じ空手でも国籍の違う人がやるとこうも解釈が違うのかと関心するやら呆れるやら。ただどの国のどの格闘技もやっている側はそれなりに真剣で、情熱が感じられます。
 さて第一回目はテコンドー稽古着と空手着の比較研究から始めます。
テレビでは時々見かけるテコンドーの衣装ですが、実際間近に見ることはあまりないでしょう。
ここマレーシアでは格闘技間の垣根は低く、というより門戸はフルオープンの状態なので、お試し稽古などは簡単にOKしてくれます。
技術編は後日ということにして、まずは初級編からスタートいたします。 
 尚、質問等ありましたらお気軽にお尋ねください。わからないことも適当にお答えいたします。なにしろここはマレーシアなのですから。

●CHECK1
前がチャックで閉じるようになっている。この格闘技に掴み(つかみ)はないことを裏付けている。*掴みなんかやった日にはあっという間に壊れてしまうでしょう。
●CHECK2
帯に短し襷(たすき)に長しとはまさにこの事でした。いくら私のお腹が出ているとはいえ、空手着の要領で帯を締めようとすると全く寸法が足りません。空手のものは前から帯を回して1周させますが、テコンドーは後ろから回していきなり前で締めるようです。*なんのこっちゃわかりませんか?

●CHECK3
後ろのポッケは小学校時代の体操服を思い起こさせてくれました。でも稽古中にも所持しなくてはならないものって何でしょう?タバコ?免許証?ティッシュ?
*お落っこちちゃうよねぇ。

※テコンドー関係者の方気を悪くしないでくださいね。素朴な疑問ですから。

2004/4/26

先日はテコンドーの試合を観にいきました。まあローカルの小さな試合なので レベルは大したこと無かったのですが、やはり組手の試合はなかなか勉強になりました。 もともと手数足数でポイントをかせぐような内容のようですが、相手にダメージを与える 必要がないため軽くて速い蹴りの応酬です。特にかかと落としは空手のものより 切れがいいし、バックステップ後の後回しから回しへの連続のつなぎなど、大いに 学ぶものがありました。  昨日はマーシャルアーツのジムを見つけました。もともとムエタイや空手などの格闘技 はあまり一般的ではなく、道場が点在しないので逆に一箇所に集中しているようです。 設備もかなり充実していてサンドバッグやウェイトトレーニング機材、リングも完璧です。 空手のレッスンで体験稽古しましたが、沖縄剛柔流**館という流派で師範は中国人 です。内弟子時代には日本にいたことがあるらしく、若い頃によく稽古しただろうというのは 動きをみてわかります。いまどき珍しい伝統派スタイルを体現できる人でした。 キックボクシングの体験も来週してみたいと思います。

2004/4/30

 

押忍!!
といってもこちらの空手はそうは挨拶しません。昨日は道場に行って入会手続き をしようと思っていたのですが、急な仕事で行けませんでした。入会金は4500円、 会費も月々4500円程度で、こちらの物価から言えば結構高い習い事ではあります。 そのかわり設備は完璧で、暇があればエアロビクス、太極拳、ヨガなどに無料参加 できる特典付きです。ウェイトトレーニングの機材使用料は月900円アップになります。 今度の日曜日は仕事を入れられたので空手にはいけませんが、どうにかして土曜の 夜のテコンドーに行きたいと思います。なんかこの歳になって格闘技道楽するとは 思ってもみませんでした。新しい発見があったらまた報告します。再見......。

2004/5/17

 「格闘技のなかで一番強いのはカラテだよ。カラテで一番強いのは●●だ。」 かの●●がそうおっしゃられてからはや15年......かどうか知りませんが 私の異種格闘技修行は関係なく地道に進んでおります。昨夜はテコンドー、今日は タイキックボクシングをやりました。ではテコンドーのほうからご報告いたします。  土曜の夜は先生がチャイニーズのちびっ子のプライベートレッスンをやってらして そこにお邪魔しました。その子たちのパパがたいそうお金持ちらしく、豪華マンション のプールサイドの掘建て小屋みたいなところでの稽古でした。先週は幼児クラスの 練習中にトイレに駆け込んでゲロってしまいましたが、今回はなんとか大丈夫でした。 でもうさぎ跳びの最中に太った私のユニフォームのパンツはピリッとやぶけてしまいました。 「先生見て。」とお尻を見せましたが相手にされず「ズルしないで続けなさい。」と一蹴 されました。基本は実に簡単で、型で言えば太極初段レベルのことをやらされるのですが 40前のおっちゃんにはなかなか覚えられず、「KOJI、なにやってるんだ。」とため息を 連発させてしまいまいした。物覚えも悪いのですが、突きの高さ、引き手の位置、なんと いっても体に染み付いた空手のリズムが邪魔して、それを訂正しようとすると余計に 力が入ってしまいます。まあそんなこんなで必死こいてなんとか稽古を終えました。  今日のタイキックの練習はまず構え方、足の動き、パンチの動きを教えられました。 前回の剛柔流の稽古に比べると、私たちのやってた正道会館のカラテはいかに タイキックを研究していたかがわかりました。ステップも非常に良く似ていましたが 当然つかみなどなく、我々が稽古した●●カラテも最後は日本独自の感覚で組み立てられた格闘技 だと言うことに気付かされました。パンチはあくまでボクシングスタイルで、ガードの 重要性も非常に具体的にわかりました。キックは足の甲ではなくすねで蹴るように いわれるのですが、サンドバッグとの距離感がいまいちわからず、結局くるぶしの あたりで蹴っていると、足の甲が内出血してしまいました。私たちのパンチはカラテと ボクシングの中間あたりにあると思うのですが、グラブをはめてサンドバッグを叩くと 思うように力が伝わらず、さらに力を込めて打とうとするので「そんなことやったてら すぐに疲れちゃうよ。もっとリラックスしてタイミングをつかんだらいいよ。」と インストラクターにアドバイスされました。本当の先生はいまタイに試合にいってる そうです。マレーシアの警官ということでした。まあ次回はほんまもんに出会えるでしょう。  しかし面白いのは人間模様で、テコンドーのプライベートレッスンは当然リッチパパが 払っていて、テニスか何かのコーチを頼んでるみたいな感覚なのです。中国人おやじが 稽古している私たちの横でソファーに足をなげだして新聞を読んでました。日本なら 考えられないでしょう?日本の先生の横で僕がそんなことやったらもう二度と教えてもらえ ないでしょう。でもここはマレーシア、金持ちの中国パパが偉く、貧しいインド系の師範は あくまで雇われ者なのです。でもそれはそれとして、お互いわだかまりらしいものも 感じられず、程よい関係が成立していました。  なんか仕事しにきたのか格闘技研究にきたのかわかりませんが、あと2週間はこちら です。マレーシアの小さな日本人社会のばかばかしいお付き合いも避けられませんが 一週間に一度、こんな触れ合いがあると救われます。まあ時間の許す限り私の格闘 バカ一代は続きます。ぜひ続けてご購読ください。ではテリマカシ、ジュンバラギ。

2004/5/19

今日は事務所の現地スタッフも早くに引き上げて、本当なら私は日本からやってくる お客様と飲みにいくところでした。ところがそれをなんのかんのとごまかして、ジムへと 向かったのでした。ジムは事務所からだいたい車で30分ほどのところにあります。当然 車なんて持ってませんからタクシーに乗るわけですが、料金は格安で300円ほどで済んで しまいます。さてジムに乗り込んで「今日はタイキックの日だよねえ。」とわかっているのに わざと聞いたところ、ジムの兄ちゃんがなんだか迷惑そうな顔をするではありませんか。 話をきいてると、ウィークエンドの人と平日の人は分けているんだそうな。なんじゃそりゃ と思いながらも、飲み会すっぽかしてタクシー飛ばして来たのにこのまま引き下がるわけにはいきません。「見るだけならいいんだろ?」と聞くと「NO PROBLEM(←スペルこれで 良かった?)」との答え。そこで「そういやあクラスの休みの日でもジムの利用はOK だったよねえ。」と聞くと「OK。サンドバッグは使っていいよ。」というので、「じゃあ隅っこ で練習させてね。」と呆れ顔の兄ちゃんを尻目にさっさと着替えて下の階のリングに 降りていったのです。そこで見たものは!!驚愕の次号を待て......と少年ジャンプみたい なことは言いません。    先日、話に聞いていたお巡りさんのタイキックボクサーがいるではありませんか。 身長がだいたい180ちょっと、でもさすがに現役だけあって遠目には結構迫力があります。 頭はお坊さんのように短く刈っていて、いかにもキックボクサーという感じです。 クラスのみんなも集まってて、ちょっと異様な雰囲気です。どちらかというと日曜日の クラスのほうが素人向けといったほうがいいでしょうか。「なんじゃお前は?」と取り囲まれたらどうしようとか、ありえない恐怖に苛まれながら彼らの横を素通りしてリングの反対側へ 移りました。窓側のそこで軽く体操などもするのですが、彼らのことが気になって体を ひねりながらチラチラと見てしまいます。彼らはといえば私のことなどお構いなく練習を 開始しました。タイの音楽(ヘビ使いのようなあの音楽)がかかって、彼らがサンドバッグを 叩き始めました。最初は恐ろしげに見えていた彼らですが、その蹴りやパンチを見てると 「何だ素人じゃあないの。」といいたくなるほどお粗末でした。ただ彼らを回って指導している お巡りさんは肘うちの手本なんかをごく簡単に見せるのですが、さっすがあという感じです。 私もサンドバッグを夢中で蹴り倒しているうち、だんだん彼らのことも気にならなくなって 汗をブルブルかいてトランス状態に陥っていきました。しばらくすると若い男が、パートナー を伴ってリングに上がりました。あれっ?この人見たことある。実は日曜日にジムの兄ちゃん とナイフの斬りつけ合いごっこをしていた人で、そのときはそれほど気にも留めてませんでした。ただ今から考えると、そのナイフ裁きは絶妙で正直スポーツチャンバラよりもリアリティ がありました。なにしろ構えた相手の手をまるでナイフで舐め回すように斬りつけるのです。 警官ならこんな訓練はしないだろうし、きっと軍人に違いない。と勝手に納得しました。 さてTシャツを脱いだ彼の体はまるで彫刻のように筋肉質で美しく、「抱かれてみたい...。」 と思わせるほどでした。相手に持たせたミットを蹴り始めるのですが、これがまた美しい。 とにかくバランスが素晴らしく、「ああ。僕を蹴って...。」とは思いませんが、こりゃほんま もんだわ。と感心してしまいました。  さて彼らの練習が終わる前にシャワー浴びちゃおう。とまたまたズルイ事を考えた 私はさっさと汗を流し、爽快な気分でカーテンを開けたのです。そこでお巡りさんの キックボクサーにばったり出くわしました。ちなみにマレーシアという国では、見知らぬ 人にでもすれ違いざまににっこり笑顔を見せる習慣があります。そこで「お疲れさま。」の 意味をこめて、こちらから笑顔を向けると彼は片方の手で一瞬拝むような仕草と 一緒に、笑顔を私に向けました。その表情はまるで本当のお坊様のように慈悲深く また子供のように純粋でした。会話を交わしたわけではないのですが、仮に彼が マレーシアに掃いて捨てるほどいる汚職警官だったとしても、彼の心にはまぎれもない 仏教の教えが息づいていると感じました。イスラム教徒だったりして......。まあいいのです。 格闘技をひたむきに愛している人たちと触れ合うのが今回のテーマなのですから。  これから格闘技通信はまだまだ続きます。お巡りさんとも、彫刻のような肉体の青年とも またまたインド人のテコンドーの師匠とも、いずれはどつきあいをすることになるでしょう。 まあ見てなさい。私だって40前の肉体に優しくムチ打って強くなってやるんだから。 マレーシアを去る日にはリングのコーナーの椅子に座って言ってやる。 「燃え尽きたぜ...。真っ白によ......。」ってなあ。   では、驚愕の次号を待て!! 40前の山本孝二先生に励ましのお便りを送ろう。抽選でジム特製のワッペン(これが 結構怪しくていいのよ)が当たる!!じゃあ待ってるぜっ!!

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